「日本の原始美術」縄文時代(小林 達雄編・講談社)

「日本の原始美術」縄文時代

@     諸磯様式a式からd式へと変化して、長野県でのc式は、口唇に配された耳状の突起や、粘土粒及び胴部にまで散りばめられたボタン状貼付文を特色とする。

 長野県丸山遺跡         長野県下島遺跡

A 顔面付深鉢  長野県海戸遺跡


B 深鉢・五領ヶ台式  長野県中っ原遺跡

C        縄文土器の華

縄文土器の登場以来、弥生土器と交替するまで、全国各地に多種多様の様式がはやりだしたが、総じて器種は増加し、装飾的効果もますます高められ、中期でその頂点に達した。口縁突起は大形化し、文様も平肉彫り的に華やかさを加えながら、各様式毎に独特なモチーフが工夫された。縄文土器が到達した極盛期=開花期である。


 a 大型深鉢・勝坂式  長野県荒神山遺跡


b 大形深鉢・勝坂式  長野県荒神山遺跡


c 深鉢 勝坂式  長野県宮城遺跡 荒神山遺跡


d 深鉢 勝坂式 長野県矢田尻遺跡

  隆線と沈刻の稜線が滑らかで、本様式の終末の特徴を示す。勝坂様式は、縄文土器の中で最も豊富な種類のモチーフを誇るが、特に人体モチーフと並んで蛇体或いは蛇頭のモチーフが多用され、色々な形に融合して見え隠れする。

D 曾利様式の美

 中期中葉に、勝坂様式と交替して中部山岳地帯に出現した曾利様式。

文様は器面に盛り上がって依然立体的であるが、突起見るごとき彫刻的手段は次第に廃れ、粘土紐を貼り付ける手法が主流を占める。渦巻き文を集合して大小異なる突起を作り、或いは土器の正面なり、一定の方向性を示す。

 10円葉書のデザインに登用されたが、胴下半分は推定復元である。

a 深鉢 長野県曾利遺跡


b 深鉢 長野県荒神山遺跡     c 深鉢 長野県増野新切遺跡


d 深鉢 長野県赤丸山遺跡    e 深鉢 長野県梨久保遺跡


f 深鉢 長野県梨久保遺跡

D        謎の造形

中期は縄文土器発達の過程で徐々に獲得された成果が、遂に集大成された時期である。特に関東・中部の成果は他を圧して目覚しく、豊富な器種の創造に成功した。香炉形土器や釣手形土器はその代表格で、特に入念な装飾と顔面付など独特なモチーフが付けられ、後期以降にも継承されている。

a 顔面付香炉形土器 長野県御殿場遺跡・勝坂式

b 釣手形土器 長野県井戸尻遺跡・勝坂式

c 釣手形土器 長野県札沢遺跡・勝坂式


E        煮炊きする器・深鉢

 口が大きく開き、丈の高い器、「深鉢」は、最古の段階以来、縄文土器に最も主要な器種である。その用途の第一は、食料の煮炊きであって、火をあびて赤変し、すすで汚れていることも多い。時には、焦げ付きや煮汁が炭化して黒くこびりついていることもある。ただし、火にかけたあとの無い大型の深鉢の役割の一つは、水の蓄えであったろう。口を平らに仕上げず、突起を設け、或いは起伏をつけた「波状口縁」に仕上げたものが多いのは、縄文土器の特徴の一つである。

a 深鉢 長野県大安寺遺跡

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